派遣労働者の「無期化」が引き起こす問題

改正派遣法が施行されてから、2か月近くが経ちます。

改正法に関する様々なお問合せを受けていると、今回の法改正で廃止されたのは特定派遣ではなく一般労働者派遣事業だったのではないかと思うことがあります。
特に派遣元に課された雇用安定措置やキャリア支援の内容を確認し、厳格な運用を検討すると、そのように思うことがあります。

施行後の問題点などについて、何回かに分けてコメントさせていただきます。
まず今回は、「無期化」についてです。

ご存じのとおり、無期雇用派遣労働者は期間制限の例外の一つとされています。
このため、軽々しく「無期化」を勧める一部の派遣元と「無期雇用労働者」の派遣を期待する一部の派遣先が引き起こす問題事例が表面化してきました。

派遣元A社が派遣先に対し、「期間制限の適用を受けない無期雇用派遣スタッフを派遣します」とアプローチします。

派遣先とすれば、取引先である他の派遣元B、C、D社に対して、「御社も無期雇用スタッフを派遣してくれないのか?」と口頭で確認するだけでなく、派遣元に対しアンケートを取るという行為に出ているケースはいくつも聞いています。

それがエスカレートして、アンケートにプラスして無期スタッフを派遣できない場合には、取引終了するとまでの文書通知があったようです。

厚生労働省は旧26業務スタッフに期間制限を適用する主たる理由として
(1)「派遣労働者の固定化」の回避
(2)「派遣先による正社員化促進」を掲げていたはずです。

無期化して同一の派遣労働者が3年を超え期間の定めなく就業を続ける。派遣労働者の固定化以上に問題なのは、こうして無期雇用の派遣労働者に囲まれた派遣先は直接雇用することなく労務の提供を受け続けることになります。
つまり、派遣先による正社員化の促進とは真逆の方向に進むことになります。
これが、派遣法改正の骨格部分なだけに、なんとも複雑な思いがします。

※事務系の派遣会社を前提にしております。次回は、「無期化」の危うさについて…。

(コンサルティングミッション 秋元次郎)

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